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業績予想の修正の開示基準と、決算説明資料での前年比・計画比・修正前予想比の示し方

執筆:石塚康一(公認会計士)2026年11月読了の目安 14分

業績予想の修正の開示 開示基準の判定と前年比・計画比の示し方

期中に業績の見通しが変わったとき、上場会社は業績予想の修正を開示するかどうかを、有価証券上場規程と同施行規則の基準で判定します。修正を開示した期の決算説明資料では、表の数値が前年同期の実績、期初の予想、修正後の予想のどれと比べたものなのかを、投資家が取り違えないように示す必要があります。この記事では、東京証券取引所(以下「東証」)の規則と公表資料で開示の基準を確かめ、架空の数値例で判定の手順を示したうえで、説明資料で前年比・計画比・修正前予想比を並べる方法を整理します。

01業績予想の修正を開示する場面と比較の基準値

POINT新たな予想値を算出したときと、決算の数値がまとまったときに、公表済みの直近の予想値と比べて判定する。予想を公表していない会社は、前期の実績値と比べる。

有価証券上場規程第405条第1項は、上場会社の属する企業集団の売上高、営業利益、経常利益または純利益について、公表がされた直近の予想値と比べ、新たに算出した予想値または当連結会計年度の決算に施行規則の基準に該当する差異が生じた場合に、直ちにその内容を開示するよう求めています。東証の上場会社向けナビゲーションシステム(以下「東証FAQ」)は、この開示を「業績予想の修正、予想値と決算値との差異等」として説明しています。

判定が必要になる場面は二つあります。一つは期中に社内で新たな予想値を算出したときです。東証FAQは、第2四半期の実績を踏まえて算出した通期の予想値が、直近の公表予想から基準を超えて乖離する場合に開示が必要としています。もう一つは決算の数値がまとまったときで、直近の予想値と決算の実績値の差異も同じ基準で判定します。

比較の基準値は、公表がされた直近の予想値です。予想値を公表していない会社では、公表がされた前連結会計年度の実績値が基準値になります。東証の「決算短信・四半期決算短信作成要領等」(2026年7月版。以下「作成要領」)は、次期の業績予想を開示しない会社でも、社内に予想に相当する情報があり、前期の実績値と比べて基準に該当すれば直ちに開示が必要と説明しています。期初には乖離が小さくても、期中に算出した予想値や決算の実績値が乖離すれば、その時点で開示の対象になります。

02施行規則第407条の基準と判定の数値例

POINT新しい数値を基準値で割り、売上高は1.1以上または0.9以下、営業利益・経常利益・純利益は1.3以上または0.7以下なら開示する。項目ごとに判定し、一つでも該当すれば開示が必要になる。

差異の重要性の基準は施行規則第407条が定めています。判定には、新たに算出した予想値または決算の数値を、直近の予想値(予想値がなければ前期の実績値)で割った数値を使います。連結の場合、売上高は1.1以上または0.9以下、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は1.3以上または0.7以下のときに基準に該当します。国際財務報告基準(以下「IFRS」)を任意適用する会社は、経常利益を税引前利益に、純利益を当期利益と親会社の所有者に帰属する当期利益に読み替えます。

連結財務諸表を作成する会社でも、個別の売上高、経常利益、当期純利益は判定の対象で、対象外になるのは個別の営業利益だけです。個別の経常利益は、比率が1.3以上または0.7以下であることに加え、差額を前事業年度末の純資産額と資本金の額のいずれか少なくない金額で割った数値が0.05以上の場合に該当します。個別の当期純利益では、この数値の条件が0.025以上です。基準値が0の場合と、直近の予想値が赤字で新しい予想値が黒字のように符号が変わる場合は、東証FAQによれば比率によらず開示が必要です。

項目 直近予想値 新予想値 比率 基準の範囲(帯の外で該当) 判定 0.50.70.91.11.31.5 売上高基準 0.9以下・1.1以上 10,0009,2000.92 該当しない 営業利益基準 0.7以下・1.3以上 8005400.675 該当 経常利益基準 0.7以下・1.3以上 7805600.718 該当しない 親会社株主に帰属する当期純利益 5003300.66 該当 単位:百万円。比率=新予想値÷直近予想値。数値は説明のための架空の値 売上高該当しない 直近予想 10,000 → 新予想 9,200 比率 0.92(基準 0.9以下・1.1以上) 営業利益該当 直近予想 800 → 新予想 540 比率 0.675(基準 0.7以下・1.3以上) 経常利益該当しない 直近予想 780 → 新予想 560 比率 0.718(基準 0.7以下・1.3以上) 親会社株主に帰属する当期純利益該当 直近予想 500 → 新予想 330 比率 0.66(基準 0.7以下・1.3以上) 単位:百万円。比率=新予想値÷直近予想値。架空の値
FIG.1連結の通期予想を修正する場合の判定の設例。営業利益と純利益が基準に該当するため、修正の開示が必要になる。数値は説明のための架空の値。有価証券上場規程第405条、同施行規則第407条、東証FAQ「業績予想の修正、予想値と決算値との差異等」をもとにIR支援室作成。

予想値をレンジで公表している場合、東証FAQは、上限と下限の二つの予想値があるものとみなして判定するとしています。新しい予想値が特定の数値なら、その数値を上限と下限のそれぞれで割り、どちらかが基準の範囲を外れれば開示が必要です。新しい予想値がレンジの内側に収まっていても、レンジの幅が広いと次の設例のように基準に該当します。

営業利益の直近予想 600〜1,000百万円(レンジ)、新予想 620百万円(特定値) 4006008001,0001,200 公表済みのレンジ 新予想 620 下限との比較 620 ÷ 600 = 1.03 範囲内 上限との比較 620 ÷ 1,000 = 0.62 該当 営業利益の直近予想 600〜1,000百万円 新予想 620百万円(特定値) 4006008001,0001,200 公表済みのレンジ 新予想 620 下限との比較 620 ÷ 600 = 1.03範囲内 上限との比較 620 ÷ 1,000 = 0.62 該当
FIG.2レンジで公表した予想値を特定値に修正する場合の判定の設例。新予想値はレンジの内側にあるが、上限との比率が0.7以下のため基準に該当する。数値は説明のための架空の値。東証FAQ(管理番号8182)をもとにIR支援室作成。
FOR INVESTORS

投資家は、修正の開示資料を受け取ると、どの項目が基準に該当したかよりも、修正前の予想から何がいくら変わったかを見ます。FIG.1の設例のように営業利益だけが大きく下がった場合、売上高の減少による減益なのか、費用の増加なのかを分けて説明できるかどうかで、面談で受ける質問の数が変わります。

DISCLOSURE

経常利益の比率0.718のように基準の近くにある項目は、決算の数値が少し動くだけで判定が変わります。決算の集計の途中と確定の時点で判定をやり直し、個別の業績の判定も同じ表で行っておくと、開示の漏れを防げます。

03決算短信での業績予想の記載と予想を開示しない場合の扱い

POINT業績予想の期間・項目・形式は会社が選べる。予想を出さない場合は決算短信にその旨と理由を書き、前期実績との比較による修正の開示の判定は残る。

東証は2012年3月21日の「業績予想開示に関する実務上の取扱いについて」で、通期と第2四半期累計期間の予想を特定の数値で示す「原則的な取扱い」の区分を廃止しました。作成要領は、予想の期間を第2四半期(累計)と通期、通期のみ、四半期のみから選ぶ例、予想をレンジで記載する例、業績の予想値を記載しない旨とその理由を記載する例を挙げています。予想を記載しない会社にも、01で見た前期の実績値との比較による判定は残ります。

作成要領は、業績予想が必ず達成すべきコミットメントと誤解され、過度な株価の変動を招くことがあると指摘しています。そのうえで、前提条件とあわせて、客観的予想、目標、保守的なコミットメントといった自社での位置付けを、表題や注意表示などで説明するよう推奨しています。中期経営計画の数値目標のように、次期の業績予想以外の将来予測情報を修正する場合について、東証FAQは根拠を上場規程第411条の3とし、規程上の判断基準はなく投資判断への影響の大きさを考えて判断するとしています。

四半期決算短信のサマリー情報の欄外には「直近に公表されている業績予想からの修正の有無」の欄があります。東証FAQは、重要性の基準に該当するかどうかにかかわらず、予想を修正すれば「有」を選ぶとしています。修正の理由、修正前後の予想値、増減額・増減率は、添付資料に書くか、四半期決算短信とは別に業績予想の修正の開示資料を作って示します。

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決算説明資料の作成をIR支援室が支援します

業績予想を修正した期の説明資料の構成から作成まで受け持ち、修正の開示資料・決算短信との数値の一致は公認会計士が確認します。支援メニューを見る →

04決算説明資料での前年比・計画比・修正前予想比の並べ方

POINT比べる相手ごとに列を分け、予想の列には公表日を書く。修正を開示した期は、期初予想と修正後予想の両方の列を残す。

決算説明資料には様式の定めがなく、何と比べた数値を載せるかは会社が決めます。比べる相手になるのは前年同期の実績と、公表済みの予想です。修正を開示した期には期初予想と修正後予想が別の数値になるため、「計画比」とだけ書いた列は、どちらの予想と比べたのかが読み手に伝わりません。比較の種類ごとの基準値と出所を次の表にまとめます。

比較の種類基準値基準値の出所示し方
前年比前期または前年同期の実績当期の決算短信の比較情報増減額と増減率。前期の数値は遡及修正・組替え後の値
期初予想比期初に公表した業績予想前期の決算短信のサマリー情報差額と達成率(実績÷予想)。列見出しに公表日を書く
修正前予想比修正前の直近の予想値業績予想の修正の開示資料増減額・増減率を修正の開示資料の値と一致させる
進捗率通期の予想値修正の開示資料または当期の決算短信累計実績÷通期予想。どの予想で割ったかを注に書く

有価証券上場規程第405条、作成要領、東証FAQをもとにIR支援室作成。比較の種類の名称は、この記事での呼び方です。

赤字の予想が絡む場合の書き方も決めておきます。東証FAQは、直近の予想値か新しい予想値が負の数の場合、増減率は計算せずに「-」と書き、増減額は変動した金額を書くとしています。例として、△50億円の純利益の予想を20億円の黒字に修正した場合の増減額70億円を挙げています。説明資料も同じ書き方にしておけば、修正の開示資料と数値がそろいます。

第2四半期累計 通期 前年同期実績 当期実績 前年比 期初予想5月14日公表 修正後予想11月12日公表 修正前予想比 進捗率修正後予想 売上高 4,3004,520+5.1% 10,0009,200−8.0%49.1% 営業利益 310240−22.6% 800540−32.5%44.4% 単位:百万円。前年比は第2四半期累計どうし、修正前予想比は通期の修正後予想÷期初予想−1、進捗率は当期実績÷修正後予想。架空の値 売上高 第2四半期累計 前年同期 → 当期4,300 → 4,520 前年比+5.1% 通期 期初予想(5月14日)→ 修正後(11月12日) 10,000 → 9,200 修正前予想比 −8.0% 進捗率 49.1% 営業利益 第2四半期累計 前年同期 → 当期310 → 240 前年比−22.6% 通期 期初予想(5月14日)→ 修正後(11月12日) 800 → 540 修正前予想比 −32.5% 進捗率 44.4% 単位:百万円。架空の値
FIG.3通期予想を修正した期の第2四半期の決算説明資料で、業績概要の頁に置く列の例。期初予想と修正後予想の列を両方残し、列見出しに公表日を書く。通期の数値はFIG.1の設例と同じ。数値・日付は説明のための架空の値。IR支援室作成。
FOR INVESTORS

アナリストは、進捗率を前年同期の進捗率と比べて、下期に残る利益の大きさを確かめます。FIG.3の営業利益の進捗率44.4%が期初予想800百万円で割った値(30.0%)と取り違えられると、下期の見通しの読み方が大きく変わります。

DISCLOSURE

説明資料の修正前予想比は、業績予想の修正の開示資料の増減率と同じ値にします。修正の開示資料が百万円単位なら、説明資料を億円単位で作る場合も、増減率は百万円単位の値から計算した率をそのまま使います。

05業績予想を修正した期の説明資料の作成手順

POINT修正の開示資料の数値と理由を説明資料の元にし、修正前予想から修正後予想への差を要因ごとの金額で示す。

東証FAQは、修正の理由を経済動向のような抽象的な要因の記載にとどめず、予想の前提となった定量的な要因の変動や経営施策の進捗を具体的に説明することが望ましいとしています。修正の開示資料に書ききれない要因の内訳は、決算説明資料の頁を使って示せます。修正を開示した期は、次の順で説明資料を作ります。

  1. 修正の開示資料の数値を説明資料の元にする

    修正前後の予想値、増減額、増減率を、修正の開示資料から説明資料にそのまま移します。修正を決算短信と同じ日に開示する場合は、決算短信のサマリー情報の予想値とも一致させます。

  2. 修正前予想と修正後予想の差を要因ごとに分ける

    営業利益の差を、売上高の変動による影響、原価率の変動、販売費及び一般管理費の増減などに分け、金額で示します。セグメントごとに分けられる会社は、セグメント別の修正額も載せます。

  3. 期初予想と修正後予想の列を残し、公表日を書く

    FIG.3のように、期初予想と修正後予想の両方の列を置き、列見出しに公表日を書きます。期中に2回修正した場合は、直近の修正前の予想値を修正前予想比の基準値にし、どの公表日の予想かを注に書きます。

  4. 予想の前提と位置付けを書き直す

    為替レートや市況の前提を変えた場合は、修正後の前提を載せます。予想を目標として示すのか、客観的な予想として示すのかの位置付けも、作成要領の推奨に沿って書き直します。

—まとめ

業績予想の修正の開示は、有価証券上場規程第405条第1項と施行規則第407条の基準で判定します。新しい数値を直近の予想値、予想がなければ前期の実績値で割り、売上高は1.1以上または0.9以下、各利益は1.3以上または0.7以下なら開示が必要で、レンジの予想は上限と下限のそれぞれで判定します。予想を開示しない会社にも前期の実績値との比較による判定は残るため、決算の集計の途中で判定の表を作っておくと漏れを防げます。修正を開示した期の決算説明資料では、前年比、期初予想比、修正前予想比を別の列に分けて予想の公表日を書き、修正前予想比の値を修正の開示資料と一致させます。そのうえで修正前後の差を要因ごとの金額で示せば、修正の理由を投資家が自分で確かめられる資料になります。

石塚康一

執筆

石塚 康一公認会計士/株式会社プライムコンサルティング 代表取締役

監査法人のIPO部門と、証券会社の投資銀行部門(主幹事証券会社の公開引受部)を経て、株式会社プライムコンサルティング代表取締役。数十社の上場準備に携わり、開示書類の作成と会計論点の検討を受け持ってきました。IR支援室では、決算説明資料・ロードショーマテリアルの作成と、会計面の確認を担当しています。

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出典

  1. 株式会社東京証券取引所「有価証券上場規程」(第405条、第411条の3) https://jpx-gr.info/rule/tosho_regu_201305070007001.html
  2. 株式会社東京証券取引所 上場会社向けナビゲーションシステム「業績予想の修正、予想値と決算値との差異等」(管理番号6851。有価証券上場規程施行規則第407条の基準を含む) https://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge6851.html
  3. 同 FAQ「第2四半期決算の予想値と実績値に大幅な乖離がある場合の通期業績予想の修正」(管理番号8262) https://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge8262.html
  4. 同 FAQ「業績予想を公表していない場合の開示」(管理番号8181) https://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge8181.html
  5. 同 FAQ「直近の業績予想がレンジの場合の重要性の判断」(管理番号8182) https://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge8182.html
  6. 同 FAQ「直近の予想値が負の数の場合の増減額・増減率の記載」(管理番号8187) https://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge8187.html
  7. 同 FAQ「四半期決算短信で業績や配当の予想値を修正する場合の記載」(管理番号8218、2023年10月27日更新) https://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge8218.html
  8. 株式会社東京証券取引所「決算短信・四半期決算短信作成要領等」2026年7月 https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/format/summary/tvdivq0000004wuh-att/t13vrt0000010n9j.pdf
  9. 株式会社東京証券取引所「業績予想開示に関する実務上の取扱いについて」2012年3月21日(同年4月5日一部追記) https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/forecast/t13vrt000001ymnz-att/b7gje6000002f7t2.pdf

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