IR支援室 / コラム / 東証の要請と制度対応
COLUMN — REGULATION2026年改訂のコーポレートガバナンス・コードでCG報告書を更新する項目と期限

コーポレートガバナンス・コード(以下「コード」)は2026年に改訂され、金融庁と東京証券取引所(以下「東証」)は2026年7月21日に2026年7月版を確定して公表しました。原則の番号が大きく入れ替わったため、コーポレート・ガバナンス報告書(以下「CG報告書」)の旧番号のままの開示は、番号と中身の両方を見直します。この記事では、改訂後のコードの構成と原則の数、開示を求める原則の旧番号と新番号の対応、市場区分ごとの対象を整理し、CG報告書のどの欄を2027年7月末日までに直すかを手順にまとめます。
01改訂後のコードの構成と原則の数
POINT基本原則は5から4へ、原則は31から26へ減り、47あった補充原則は廃止された。新設の解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象外。
改訂前のコード(2021年6月版)は、基本原則5、原則31、補充原則47で構成されていました。2026年7月版は基本原則4、原則26で、補充原則はありません。旧第5章「株主との対話」は第1章に統合され、第1章の表題は「株主の権利・平等性の確保、株主との対話」に変わりました。第2章から第4章の表題は改訂前と同じです。
補充原則に書かれていた内容は、原則の本文か、各原則の下に新設された「解釈指針」のどちらかに移されています。金融庁と東証が公表した「成長投資の促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの改訂について」(以下「改訂の趣旨等」)は、コンプライ・オア・エクスプレインの対象を抽象的かつ概念的な原則に限り、各原則の実施を支える具体的な内容や趣旨・背景を解釈指針に書いた、と説明しています。解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではありませんが、東証は、原則の実施を検討する際に解釈指針を参照することを期待するとしています。
内容の面では、改訂の趣旨等は成長投資と経営資源の配分の検証を中心に挙げ、原則1-2には有価証券報告書を株主総会開催日前に提出することが例として加わりました。
02開示原則の旧番号と新番号の対応
POINT改訂前に特定事項の開示を求めていた14項目は、9つの原則に整理された。4項目は開示を求める原則から外れ、旧原則5-1の対話の方針は原則1-1へ移った。
CG報告書に直接影響するのは、特定の事項の開示を求める原則(以下「開示原則」)です。改訂前のコードでは14項目が開示原則でした。東証の「コーポレートガバナンス報告書の更新について」(2026年7月21日更新版。以下「更新について」)は、改訂後の開示原則を原則1-1、1-4、2-2、2-4、3-1、4-3、4-7、4-13、4-15の9つとし、旧番号との対応を示しています。
| 改訂前の番号 | 開示の内容 | 改訂後の番号 |
|---|---|---|
| 原則1-4 | 政策保有株式の方針、保有の適否の検証、議決権行使の基準 | 原則1-4 |
| 原則1-7 | 関連当事者間の取引の手続の枠組み | 原則4-3(3) |
| 補充原則2-4① | 中核人材の登用等における多様性の確保、人材育成方針・社内環境整備方針 | 原則2-2 |
| 原則2-6 | 企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮 | 原則2-4 |
| 原則3-1 | 経営理念・経営計画、基本方針、報酬と選解任・指名の方針と手続 | 原則3-1 |
| 補充原則3-1③ | サステナビリティについての取組み等 | 廃止(有価証券報告書の記載事項と重複) |
| 補充原則4-1① | 経営陣に対する委任の範囲 | 廃止(実務上理解が進み浸透した) |
| 原則4-9 | 独立社外取締役の独立性判断基準 | 廃止(有価証券報告書の記載事項と重複) |
| 補充原則4-10① | 指名・報酬などの委員会の構成の独立性、権限・役割 | 原則4-7(プライム市場向け) |
| 補充原則4-11① | 取締役のスキル等の組み合わせと選任の方針・手続 | 原則4-13(1) |
| 補充原則4-11② | 取締役・監査役の他の上場会社との兼任状況 | 廃止(事業報告・株主総会参考書類・有価証券報告書と重複) |
| 補充原則4-11③ | 取締役会全体の実効性の分析・評価の結果の概要 | 原則4-13(3) |
| 補充原則4-14② | 取締役・監査役のトレーニング(研鑽)の方針 | 原則4-15 |
| 原則5-1 | 株主との建設的な対話を促進するための方針 | 原則1-1(1)(記載事項は解釈指針) |
東京証券取引所「コーポレートガバナンス報告書の更新について」(2026年7月21日更新版)、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領(2026年7月版)」、「提出された意見とそれに対する考え方」(No.17)をもとにIR支援室作成。廃止の理由は同資料の東証の考え方による。
原則1-1に移った対話の方針
株主との対話の方針は、改訂前は原則5-1に置かれ、方針に書く事項は補充原則5-1②が並べていました。改訂後は、取締役会が方針を検討・承認して開示する部分が原則1-1(1)に、方針に記載すべき事項が原則1-1の解釈指針に置かれています。解釈指針が挙げる事項は、対話全般を統括する経営陣または取締役の指定、IR・経営企画・財務・経理・法務などの部門間の連携、個別面談以外の対話の手段の充実、把握した株主の意見・懸念を経営陣や取締役会に伝える方策、インサイダー情報とフェア・ディスクロージャー・ルールの重要情報の管理に関する方策です。改訂前の補充原則5-1②の項目と重なるため、既存の方針を土台にして見出しの番号を原則1-1に改め、記載事項が解釈指針の項目を満たしているかを確かめます。
廃止された4項目について、東証はパブリックコメントへの考え方(No.17)で、開示事項から外れたことで重要性が失われたと考えるのは適切ではないとしています。旧原則5-2の経営戦略・経営計画の策定・公表は開示原則ではありませんでしたが、内容は原則4-1の本文に移り、資本コストを踏まえた収益計画や経営資源の配分の説明とあわせて書かれています。
投資家の側では、CG報告書の開示原則の欄を、有価証券報告書のコーポレート・ガバナンスの状況とあわせて読みます。廃止された兼任状況や独立性判断基準も有価証券報告書などに記載があるため、CG報告書から参照先を案内しておけば、投資家が探す手間が減ります。
【原則5-1】【補充原則4-11③】のような旧番号の見出しは、番号を置き換えるだけでなく、改訂後の原則の文言と照らして中身を見直します。「更新について」も、開示原則の文言が見直されているため、改訂後の原則を改めて確かめるよう求めています。
03市場区分ごとのコンプライ・オア・エクスプレインの対象
POINTプライム・スタンダード市場は基本原則と原則、グロース市場は基本原則だけが対象。原則4-7などプライム市場向けの内容は、スタンダード市場では対象外。
改訂前は、プライム・スタンダード市場の上場会社が基本原則・原則・補充原則のすべてを、グロース市場の上場会社が基本原則だけを、コンプライ・オア・エクスプレインの対象としていました。2026年7月版では補充原則がなくなったため、プライム・スタンダード市場の対象は基本原則4と原則26です。東証の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領(2026年7月版)」(以下「記載要領」)は、スタンダード市場の会社について、原則のうちプライム市場向けの内容は対象外としています。
グロース市場の上場会社は、引き続き基本原則だけが対象で、その数が4つになりました。記載要領は、基本原則をすべて実施している場合も「コードの各原則を実施しない理由」の欄を非表示にせず、その旨を書くよう求めています。基本原則以外の原則について書くかどうかは任意です。「更新について」の提出期限は市場区分を分けていないため、グロース市場の会社も2027年7月末日までに改訂後のコードに沿って記載を直します。旧基本原則5(株主との対話)に触れた記載があれば、基本原則1の内容として書き直します。

CG報告書の更新をIR支援室が支援します
旧番号の記載の洗い出しから、開示原則の欄の書き直し、対話の方針の見直し、有価証券報告書の参照箇所の整理まで受け持ちます。支援メニューを見る →04CG報告書Ⅰ.1.で更新する欄と記載方法
POINT更新するのは、Ⅰ.1.の「コードの各原則を実施しない理由」欄と、「コードの各原則に基づく開示」から名称が変わる「コードの各原則に関する取組み」欄。
改訂の影響を受けるのは、CG報告書Ⅰ.1.「基本的な考え方」の下の二つの欄です。「コードの各原則を実施しない理由」の欄には、改訂後のコードで実施しない原則を項番や原則名で特定して、理由を書きます。記載要領は、将来の実施を決めていても提出の時点で実施していないものは「実施しない」に含むとし、理由のほか、代替手段や検討状況・スケジュールを書くことを挙げています。
「コードの各原則に基づく開示」の欄は、「コードの各原則に関する取組み」欄に名称が変わります。「更新について」は、この欄の記載を2種類に分けています。一つは原則4-1、4-2のように、実施の状況や具体的な取組み、実施していると評価する理由を書く記載で、もう一つは原則1-1、1-4のように開示原則が求める事項の記載です。二つを区別して書いても、原則の項番の順に一体で書いてもかまいません。有価証券報告書などの該当箇所を参照する書き方もでき、その場合は参照先と閲覧の方法(URL等)を書きます。
| CG報告書Ⅰ.1.の欄 | 改訂後に書く内容 | 市場区分ごとの扱い |
|---|---|---|
| コードの各原則を実施しない理由 | 実施しない原則の項番・原則名、理由、代替手段、検討状況・スケジュール。すべて実施している場合はその旨 | プライム・スタンダード:基本原則と原則/グロース:基本原則 |
| コードの各原則に関する取組み(旧「コードの各原則に基づく開示」) | 開示原則9項目が求める事項。任意で、各原則の取組みと実施していると評価する理由 | プライム・スタンダード:開示原則を記載(原則4-7はプライムのみ)/グロース:任意 |
東京証券取引所「コーポレートガバナンス報告書の更新について」(2026年7月21日更新版)、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領(2026年7月版)」をもとにIR支援室作成。
TDnetの入力フォーマットでの欄名の切替は、2027年3月を目途に行われる予定です。切替までの入力は、従来の名称の「コードの各原則に基づく開示」の欄に行います。
取組みの欄は、どの取組みをもって原則を実施と評価したかを書ける欄になりました。投資家の側では、成長投資と経営資源の配分の検証(原則4-1)を、この欄と決算説明資料の両方で確かめます。
有価証券報告書を参照する書き方を選ぶ場合は、URLだけでなく項目名など参照箇所が分かるように書き、参照先を更新したときにずれていないかを確かめます。
052027年7月末日の提出期限と更新の手順
POINT改訂を踏まえたCG報告書の提出期限は2027年7月末日。期限までの定期更新は改訂前のコードに沿ってもよいが、その場合は2021年6月版に基づく旨を明記し、期限までに別に更新する。
「更新について」は、今回の改訂を踏まえて更新したCG報告書の提出期限を2027年7月末日とし、準備ができ次第提出するよう求めています。同日までの定期更新は、改訂前のコードに沿って行ってもかまいません。その場合は二つの欄に「【コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版)に基づき記載しています。】」と書き、期限までに改訂後のコードに基づく更新を別に行います。
3月決算の会社は、2027年6月の定時株主総会の後に行う定期更新で改訂後のコードに切り替えれば、更新を1回で済ませられます。12月決算の会社が2027年3月の総会後の更新で切り替える場合は、TDnetの欄名の切替がその時点で済んでいるかを確かめてから入力します。
更新の作業は、次の順に進めます。
旧番号を使っている記載を洗い出す
CG報告書のほか、コーポレートガバナンス・ガイドライン、株主との対話の方針、社内規程の中で、【原則5-1】【補充原則4-11①】のように旧番号を書いている箇所を一覧にします。
実施しない原則を改訂後の原則で判定し直す
プライム・スタンダード市場の会社は26の原則、グロース市場の会社は4つの基本原則について、実施しているかを判定します。補充原則で説明していた未実施の事項は、移った先が原則の本文か解釈指針かを確かめます。解釈指針に移った事項は、エクスプレインの対象から外れます。
開示原則9項目の記載を作り、対話の方針を取締役会で承認する
02の表に沿って見出しを新番号に改め、改訂後の文言に照らして中身を直します。原則1-1(1)は取締役会が対話の方針を検討・承認するよう求めているため、方針を改める場合は取締役会に諮ります。廃止された4項目は、削除するか、有価証券報告書などの参照先を残すかを決めます。
提出の時期を決めて更新する
定時株主総会の後の定期更新に合わせるか、総会より前に単独で更新するかを決めます。改訂前のコードのまま定期更新する場合は、二つの欄に2021年6月版に基づく旨を書き、2027年7月末日までにもう一度更新します。
—まとめ
2026年7月版のコードは、基本原則を4、原則を26に整理し、補充原則を廃止して解釈指針を新設しました。CG報告書で開示を求める原則は14項目から9項目になり、旧原則5-1の対話の方針は原則1-1と解釈指針へ、関連当事者取引は原則4-3へ、スキル等の組み合わせと実効性評価は原則4-13へ移っています。更新するのはⅠ.1.の「コードの各原則を実施しない理由」と「コードの各原則に関する取組み」の二つの欄で、提出期限は2027年7月末日です。グロース市場の会社も、基本原則が4つになったことを踏まえて記載を直します。旧番号の記載を洗い出し、改訂後の文言で中身を見直したうえで、定時株主総会後の定期更新に合わせて提出する段取りを早めに組んでおくと、期限の直前に作業が集中しません。
執筆
石塚 康一公認会計士/株式会社プライムコンサルティング 代表取締役
監査法人のIPO部門と、証券会社の投資銀行部門(主幹事証券会社の公開引受部)を経て、株式会社プライムコンサルティング代表取締役。数十社の上場準備に携わり、開示書類の作成と会計論点の検討を受け持ってきました。IR支援室では、決算説明資料・ロードショーマテリアルの作成と、会計面の確認を担当しています。
IR支援室の関連メニュー
IR支援室は、改訂後のコードに沿ったCG報告書の見直しから、株主との対話の方針の改定、決算説明資料での経営資源の配分の説明までを支援します。ガバナンスの担当者が少ない会社の更新作業もご相談ください。
相談を申し込む出典
- 株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コードの改訂について」2026年4月10日公表、2026年7月21日結果掲載 https://www.jpx.co.jp/rules-participants/public-comment/detail/d1/20260410-01.html
- 株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コードの改訂について」(制度要綱) https://www.jpx.co.jp/rules-participants/public-comment/detail/d1/t13vrt000000sodn-att/t13vrt000000sofy.pdf
- 金融庁・株式会社東京証券取引所「成長投資の促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの改訂について」(改訂の趣旨等)2026年7月21日 https://www.jpx.co.jp/rules-participants/public-comment/detail/d1/t13vrt000000sodn-att/t13vrt000000sohd.pdf
- 株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)(改訂前からの変更点)」2026年7月21日 https://www.jpx.co.jp/rules-participants/public-comment/detail/d1/t13vrt000000sodn-att/t13vrt000000sog1.pdf
- 株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)(クリーン版)」2026年7月21日 https://www.jpx.co.jp/rules-participants/public-comment/detail/d1/t13vrt000000sodn-att/t13vrt000000solh.pdf
- 株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス報告書の更新について」2026年7月21日更新版 https://www.jpx.co.jp/rules-participants/public-comment/detail/d1/t13vrt000000sodn-att/t13vrt000000xny7.pdf
- 株式会社東京証券取引所「提出された意見とそれに対する考え方」2026年7月21日掲載、2026年8月3日更新 https://www.jpx.co.jp/rules-participants/public-comment/detail/d1/t13vrt000000sodn-att/t13vrt000001jemf.pdf
- 株式会社東京証券取引所「パブリックコメントの結果の概要」2026年7月21日 https://www.jpx.co.jp/rules-participants/public-comment/detail/d1/t13vrt000000sodn-att/t13vrt000001jemi.pdf
- 株式会社東京証券取引所「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領(2026年7月版)」 https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008j85-att/mklp77000000372l.pdf
- 金融庁「コーポレートガバナンス・コード改訂(2026年)の確定について」2026年7月21日(8月3日更新) https://www.fsa.go.jp/news/r7/singi/20260721.html


