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COLUMN — REGULATIONIR体制の整備義務で上場会社が対応する事項とコーポレート・ガバナンス報告書での開示

東京証券取引所は2025年7月22日から、全上場会社にIR体制の整備を義務付けています。根拠は有価証券上場規程第436条の5で、企業行動規範の「遵守すべき事項」に置かれました。この記事では、義務の範囲と義務ではない事項を分けたうえで、コーポレート・ガバナンス報告書(以下「CG報告書」)のどこに何を書くか、東証が公表した投資者の声から何が求められているかを整理します。IRの専任者がいない会社の経営企画・管理部門の方を想定しています。
01IR体制の整備義務の根拠と施行日
POINTIR体制の整備は、2025年7月22日施行の有価証券上場規程第436条の5で全上場会社に義務付けられた。企業行動規範の「遵守すべき事項」に置かれている。
IR体制の整備は、2025年7月7日に公表された有価証券上場規程等の一部改正で定められ、同年7月22日に施行されました。改正後の第436条の5は、上場会社は株主・投資者との関係構築に向けて必要な情報提供を行うための体制(IR体制)を整備しなければならない、と定めています。規定の場所は企業行動規範の「遵守すべき事項」で、「望まれる事項」ではありません。
東証は改正に先立ち、2025年4月14日に「IR体制の整備について」、4月30日に「IR体制の整備義務化に係る対応・留意点について」を公表し、施行日と同じ7月22日に「IR体制・IR活動に関する投資者の声」を公表しました。きっかけとなったのは、2023年3月の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」以降の、投資者と上場会社の対話の状況です。
02義務の範囲と、義務ではない事項
POINT義務は「体制の整備」とその開示まで。IR担当役員・専門部署の設置やIR活動の実施は求められていない。
義務付けられたのは「体制の整備」です。東証の「対応・留意点」は、具体的な体制は企業規模や株主構成等を踏まえて各社で検討するものとし、IR担当役員・IR専門部署・専任担当者の設置を必ず求めるものではないとしています。説明会の開催や個別面談といったIR活動の実施そのものも義務ではありません。
一方で、同資料のQ&Aは、IR体制が全く整備されていない場合には公表措置等の実効性確保措置の対象となる場合がある、と答えています。整備した体制はCG報告書で開示する必要があり、体制があっても記載していなければ、株主・投資者からは確認できません。
投資者は、IR担当の部署名よりも、誰が責任者で、経営陣とどうつながっているかを見ます。CG報告書の記載は、面談を申し込む前に最初に確かめる情報の一つです。
体制を変えたときは、CG報告書の更新が必要になります。人事異動で責任者や部署名が変わった場合も、記載との食い違いが出ないよう更新の手続を決めておきます。
03CG報告書での開示箇所と記載内容
POINT開示箇所はCG報告書Ⅲ.2.「IRに関する部署(担当者)の設置」の補足説明欄。責任者・部署・担当者・窓口を書く。
IR体制は、CG報告書のⅢ.2.「IRに関する活動状況」の中の「IRに関する部署(担当者)の設置」で開示します。東証は、この項目の補足説明欄に、IRに関する責任者(担当役員など)、部署、担当者や窓口などの体制を記載するよう求めており、この欄は必ず表示するものとしています。CG報告書以外の書類や図表を参照する書き方も認められていますが、その場合はリンク先と参照箇所を分かりやすく示します。
| CG報告書 Ⅲ.2.の項目 | 記載する内容 | 今回の義務との関係 |
|---|---|---|
| IRに関する部署(担当者)の設置 | 責任者(担当役員など)、部署、担当者、窓口 | 体制の開示の中心。必ず表示 |
| 個人投資家向けに定期的説明会を開催 | 実施時期、内容、説明者 | 活動の開示(実施は義務ではない) |
| アナリスト・機関投資家向けに定期的説明会を開催 | 実施時期、内容、説明者 | 活動の開示(実施は義務ではない) |
| 海外投資家向けに定期的説明会を開催 | 実施時期、内容、説明者 | 活動の開示(実施は義務ではない) |
| 代表者自身による説明の有無 | 各説明会での代表者による説明の有無 | 活動の開示 |
| IR資料のホームページ掲載 | 掲載している資料、URL | 活動の開示 |
東京証券取引所「IR体制の整備について」(2025年4月14日)、「IR体制の整備義務化に係る対応・留意点について」(2025年4月30日)をもとにIR支援室作成。記載方法の詳細は東証の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領」を確認してください。
「対応・留意点」は、すでにIR担当部署や担当者を置いていながらCG報告書に記載していない事例が見られるとしています。体制があるのに記載がない会社は、記載を加えるだけで義務への対応が済みます。逆に、記載はあるものの実態が変わっている会社は、実態に合わせて更新する必要があります。

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IRポリシーとディスクロージャーポリシーの作成、CG報告書の記載、適時開示の社内手続の整理まで受け持ちます。支援メニューを見る →04「IR体制・IR活動に関する投資者の声」の改善例と評価例
POINT東証は、形式的な担当の設置ではなく、経営陣が語ること・対話を取締役会に戻すこと・質疑を含めて公平に出すことを求めている。
東証が施行日に公表した「IR体制・IR活動に関する投資者の声」は、2023年3月以降に東証が面談した国内外100社超の投資者の意見をまとめたものです。同資料は、IR部門や担当者を形式的に置くのではなく、資本コストや株価を意識した経営の一環として体制と活動を検討することを求めています。体制について同資料が挙げている改善例と、期待される形を対応させると次のとおりです。
評価されている事例
同資料は、投資者から評価されている体制の事例として、経営企画部内に専任担当を置いて社長・CFOの直轄とした例(ダイト)、CEO直下にIR部門を置きCFOが株主との対話を統括し、対話の内容を定期的に取締役会へ報告している例(富士通)、IR専門部を社長直轄とした例(IDホールディングス)などを挙げています。IR活動では、決算説明会の資料と音声を和英で当日中にウェブサイトへ掲載している例(オリックス)、英文資料を同日に開示し質疑応答を含む説明会資料を公開している例(インターネットイニシアティブ)が挙がっています。
反対に、IR活動で改善が期待される例として、フェア・ディスクロージャーを理由に個別面談を断ること、説明会の質疑応答をスクリプトから除くか要旨だけにすること、社外取締役との面談を本人の意向を確かめずに一律に断ることが挙がっています。同資料は、投資者が個別面談で求めているのは未公表の情報ではなく、中長期の戦略や資本政策の理解だとしています。
専任者のいない会社でも、面談の窓口が決まっていて返信が早いこと、決算説明会の質疑が公開されていることは、投資者が体制を判断する材料になります。
面談で話す内容を、公表済みの決算短信・有価証券報告書・説明資料の範囲に揃えておけば、フェア・ディスクロージャー・ルールを理由に面談を断る必要はなくなります。
05上場会社の対応手順
POINT義務への対応は「体制を書き出す」「CG報告書を更新する」の2つ。残りは投資者の期待に応えるための整備。
IRの専任者がいない会社を想定すると、対応は次の順に進めるのが現実的です。最初の二つは義務への対応で、残りは投資者の期待に応えるための整備です。
現状の体制を書き出す
IRの責任者(担当役員)、所管部署、担当者、投資者からの問い合わせ窓口を、社内規程や業務分掌と照らして書き出します。兼務であれば兼務の内容も書きます。
CG報告書の記載を確認し、更新する
Ⅲ.2.「IRに関する部署(担当者)の設置」の補足説明欄に、書き出した体制を記載します。すでに記載がある場合は、人事異動や組織変更で実態とずれていないかを確かめます。
経営陣とIR担当の連携を決める
決算説明会や面談に経営陣のだれが出るか、IR担当がだれに報告するかを決めます。担当部署を社長やCFOの直轄に置く会社もあります。
対話の内容を取締役会に報告する仕組みを作る
面談や説明会で出た質問と意見を記録し、四半期ごとなど時期を決めて取締役会に報告します。報告した内容は、次の決算説明資料や想定問答に反映します。
IR活動の範囲を決め、CG報告書の活動欄にも反映する
説明会の開催、個別面談の受け方、資料の英訳など、自社で行う範囲を決めます。決めた内容はCG報告書の各欄と、自社のIRサイトに反映します。
—まとめ
2025年7月22日施行の有価証券上場規程第436条の5で義務付けられたのは、IR体制の整備とその開示までで、IR担当役員や専門部署の設置、説明会の開催までは求められていません。まず対応すべきなのは、自社のIRの責任者・部署・担当者・窓口をCG報告書のⅢ.2.に正しく記載することです。そのうえで、東証が公表した投資者の声は、経営陣が自ら語ること、対話の内容を取締役会に戻すこと、質疑応答を含めて公平に情報を出すことを、体制の中身として求めています。義務への対応を済ませた会社でも、この3点が自社でどこまでできているかを点検する価値があります。
執筆
石塚 康一公認会計士/株式会社プライムコンサルティング 代表取締役
監査法人のIPO部門と、証券会社の投資銀行部門(主幹事証券会社の公開引受部)を経て、株式会社プライムコンサルティング代表取締役。数十社の上場準備に携わり、開示書類の作成と会計論点の検討を受け持ってきました。IR支援室では、決算説明資料・ロードショーマテリアルの作成と、会計面の確認を担当しています。
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IR支援室は、IR体制の整備から決算説明資料の作成、投資家面談の伴走までを支援します。専任のIR担当者がいない会社の体制づくりもご相談ください。
相談を申し込む出典
- 株式会社東京証券取引所「MBOや支配株主による完全子会社化に関する上場制度の見直し等に係る有価証券上場規程等の一部改正について」2025年7月7日 https://www.jpx.co.jp/rules-participants/rules/revise/um3qrc000001o3n5-att/gaiyo.pdf
- 株式会社東京証券取引所 上場部「IR体制の整備について」2025年4月14日 https://www.jpx.co.jp/rules-participants/public-comment/detail/d1/um3qrc0000015ff9-att/um3qrc0000015zgf.pdf
- 株式会社東京証券取引所 上場部「IR体制の整備義務化に係る対応・留意点について」2025年4月30日 https://www.jpx.co.jp/news/1020/um3qrc00000192r1-att/um3qrc00000192tw.pdf
- 株式会社東京証券取引所「IR体制・IR活動に関する投資者の声」の公表について 2025年7月22日 https://www.jpx.co.jp/news/1020/20250722-01.html
- 日本取引所グループ「IR体制・IR活動」 https://www.jpx.co.jp/equities/listing/investor-relations/index.html


