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COLUMN — DISCLOSURE

決算短信・有価証券報告書・統合報告書の記載項目の対応関係と作る順番

執筆:石塚康一(公認会計士)2026年11月読了の目安 12分

3書類の記載の対応 短信・有報・統合報告書の項目の対応と作る順番

決算短信、有価証券報告書(以下「有報」)、統合報告書は、根拠も公表の時期も違う書類ですが、経営方針やリスク、業績の説明といった同じ話題を扱います。担当の部署が書類ごとに分かれていると、同じ話題の説明が書類ごとに少しずつずれていきます。この記事では、3つの書類の根拠と記載項目を原典で確かめ、項目どうしの対応を表にまとめたうえで、3月決算の会社を例に1年の作成日程と文案を固める順番を整理します。

013つの書類の根拠と公表の時期

POINT決算短信は取引所の規則、有報は金融商品取引法に基づく書類で、統合報告書には作成の義務も様式もない。公表は短信、有報、統合報告書の順になる。

決算短信は、有価証券上場規程に基づく適時開示の書類です。東京証券取引所の「決算短信・四半期決算短信作成要領等(2026年7月版)」は、事業年度の決算の内容を遅くとも決算期末後45日以内に開示することが適当とし、30日以内の開示をより望ましいとしています。有報は金融商品取引法第24条第1項に基づき、事業年度経過後3か月以内に提出します。記載項目は「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示府令」)の第三号様式が定めています。

統合報告書は、法令にも上場規則にも作成の義務がない任意の書類で、決まった様式もありません。記載の枠組みには、経済産業省が2022年8月30日に改訂した「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス2.0」(以下「価値協創ガイダンス」)を使う方法があります。同ガイダンスは自らを、制度上の開示やコーポレートガバナンス・コードとは独立した追加的なものと捉えるのは適切でない、と位置づけています。

02有報の記述情報と決算短信の添付資料の範囲

POINT経営方針・事業等のリスク・サステナビリティは有報の「第2 事業の状況」に書く。決算短信の添付資料は業績の概況と今後の見通し、財務諸表に絞られている。

第三号様式の「第2【事業の状況】」には、経営方針、経営環境及び対処すべき課題等、サステナビリティに関する考え方及び取組、事業等のリスク、経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(以下「MD&A」)が並びます。記載上の注意は、経営方針について経営環境に関する経営者の認識を含めて書くこと、経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標があればその内容を書くことを求めています。事業等のリスクでは、リスクが顕在化する可能性の程度や時期、影響の内容、対応策まで書きます。2026年2月20日の開示府令の改正では、「従業員の状況」が「第4【提出会社の状況】」に移り、人材戦略に関する基本方針等が加わりました(2026年3月31日以後に終了する事業年度から適用)。

決算短信の添付資料について、作成要領が開示事項に挙げるのは、経営成績等の概況、今後の見通し、継続企業の前提に関する重要事象等、会計基準の選択に関する基本的な考え方、連結財務諸表及び主な注記です。経営方針や対処すべき課題は開示事項に含まれていません。金融庁がディスクロージャーワーキング・グループに出した2026年5月18日の資料は、2017年の見直しで、速報性が必ずしも求められない経営方針を決算短信から有報へ移したと説明しています。

決算短信(4〜5月) 有価証券報告書(6月) 統合報告書(任意) 今後の見通し次期の業績予想と前提条件 (記載欄なし)重要事象等がある場合のみ記載 経営成績等の概況当期の業績・財政状態の概況 連結財務諸表及び主な注記サマリー情報の数値 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 事業等のリスク 経営者による財政状態、経営成績及びCFの状況の分析(MD&A) 経理の状況(財務諸表) 2-1 長期ビジョン3 実行戦略 2-3 リスクと機会 4 成果と重要な成果指標(KPI) 4.1 財務パフォーマンス 有報経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 短信今後の見通し(次期の業績予想と前提) 統合2-1 長期ビジョン、3 実行戦略 有報事業等のリスク 短信記載欄なし(重要事象等のみ) 統合2-3 リスクと機会 有報MD&A(経営成績等の分析) 短信経営成績等の概況 統合4 成果と重要な成果指標(KPI) 有報経理の状況(財務諸表) 短信連結財務諸表及び主な注記 統合4.1 財務パフォーマンス
FIG.1有報の主な項目を中心にした、決算短信と統合報告書の対応。統合報告書の側は価値協創ガイダンスの項目番号。開示府令第三号様式、東京証券取引所「決算短信・四半期決算短信作成要領等(2026年7月版)」、経済産業省「価値協創ガイダンス2.0」をもとにIR支援室作成。

033つの書類の記載項目の対応表

POINT有報の項目ごとに、統合報告書で詳しく書く項目と、決算短信で数値だけを出す項目を対応させる。決算短信に記載欄のない話題が多い。

有報の項目を行に置き、統合報告書の側は価値協創ガイダンスの項目、決算短信の側は作成要領の開示事項を当てると、次の表になります。統合報告書の構成は会社が決めるため、価値協創ガイダンスの項目は対応先の一例です。

有報(第三号様式)統合報告書(価値協創ガイダンスの項目)決算短信(作成要領の開示事項)
第1 事業の内容2-2 ビジネスモデル記載欄なし(セグメント情報の注記)
第2 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等2-1 長期ビジョン、3 実行戦略(中期経営戦略など)今後の見通し(次期の業績予想と前提条件)
第2 サステナビリティに関する考え方及び取組1.2 マテリアリティの特定、2-3.1 ESGに関するリスクと機会の認識記載欄なし
第2 事業等のリスク2-3 リスクと機会継続企業の前提に関する重要事象等(該当する場合のみ)
第2 MD&A4 成果と重要な成果指標(KPI)経営成績等の概況
第4 従業員の状況等(人材戦略に関する基本方針等)3.6 人的資本への投資・人材戦略記載欄なし
第4 配当政策5.6 利益分配及び再投資の方針サマリー情報の配当の状況・配当予想
第4 コーポレート・ガバナンスの状況等5 ガバナンス記載欄なし(CG報告書で開示)
第5 経理の状況4.1 財務パフォーマンス連結財務諸表及び主な注記

開示府令第三号様式(2026年2月20日改正後)、東京証券取引所「決算短信・四半期決算短信作成要領等(2026年7月版)」、経済産業省「価値協創ガイダンス2.0」(2022年8月30日改訂)をもとにIR支援室作成。統合報告書の列は対応先の一例です。

表から分かるのは、経営方針・リスク・サステナビリティ・ガバナンスの説明は、法定の書類としては有報にしかないという点です。統合報告書はこの4つを図や事例を加えて詳しく書く書類で、決算短信は業績と配当の数値を速報する書類にあたります。

FOR INVESTORS

投資家の側では、統合報告書で読んだ中期の目標やKPIが、有報の経営方針の「客観的な指標」と同じ定義かを確かめます。統合報告書だけにあるKPIは、決算説明資料で毎期の実績が追えるかどうかで読み方が変わります。

DISCLOSURE

有報と統合報告書で、リスクの並び順やマテリアリティの名称が違うと、同じ会社の説明が2通りあるように読まれます。項目の名称と定義は有報の文案で先に決め、統合報告書はその名称をそのまま使います。

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統合報告書の作成をIR支援室が支援します

有報の経営方針・事業等のリスクと統合報告書の構成を対応させ、決算説明資料と同じ数値・用語で書けるよう日程と文案を整えます。支援メニューを見る →

04総会前開示で前倒しになる有報の作成日程

POINT2026年3月期は、3月期決算会社の88.3%が有報を定時株主総会の前に提出した。総会前に提出する場合、総会の決議事項の記載は剰余金の配当と自己株式の取得に限られる。

2025年3月28日、金融担当大臣は全上場会社に対し、有報を株主総会の3週間以上前に提出するのが最も望ましいとしたうえで、当面は総会の前日ないし数日前の提出を検討するよう要請しました。金融庁が公表した2026年3月期の状況では、3月期決算会社2,184社のうち1,928社(88.3%)が総会前に提出しています。前期は57.7%でした。プライム市場は94.3%で、3週間以上前に提出した会社は7社です。

2026年2月20日の開示府令の改正では、総会前に有報を提出しやすくするため、定時株主総会やその直後の取締役会の決議事項として記載する事項を、剰余金の配当と自己株式の取得に関するものに限りました。役員選任議案などの記載は要りません。2026年3月31日以後に終了する事業年度の有報から適用されています。

金融庁の2026年5月18日の資料は、有報の記載事項のうち投資家にとって有用性が下がった項目を整理し、2028年3月期から見直し後の様式を適用する案を示しています。同資料は、法制審議会の中間試案に、事業報告等の開示事項をすべて記載した有報を電子提供措置の開始日までに提出すれば事業報告等の作成を要しないとする案があることも挙げています。どちらも2026年11月の時点では検討の段階です。

053月決算の会社の1年の作成日程と文案を固める順番

POINT経営方針・リスク・サステナビリティの文案は期末前に有報の形で固め、決算短信の概況とMD&Aは同じ増減分析から書く。統合報告書は有報の確定した文言から作る。

3月決算の会社では、決算短信が4月下旬から5月中旬、有報が6月下旬、統合報告書がその後の任意の時期に公表されます。公表の順番どおりに作ると、5月から6月の短い期間に有報の記述情報をすべて書くことになり、総会前開示で提出が早まるほど日程が詰まります。

123456789101112月 3/31 期末 社内の文案決算短信有報・半期報告書統合報告書 有報の記述情報を更新 通期(45日以内) 1Q 中間 有報・総会(6月下旬) 半期報告書 11/14 発行の時期は会社が決める(任意) 1〜3月社内で有報の記述情報の文案を更新 3/31事業年度の末日 4月下旬〜5月中旬決算短信(期末後45日以内が適当) 6月下旬有報(総会前に提出)・定時株主総会 7〜8月第1四半期決算短信 7月以降統合報告書(発行の時期は会社が決める) 10〜11月中間期の決算短信・半期報告書(11/14まで)
FIG.23月決算の会社の開示書類の作成日程の例。第3四半期決算短信は翌年1〜2月。決算短信の時期は作成要領、有報は金融商品取引法第24条、半期報告書は同法第24条の5(中間期末後45日以内)、総会前開示は金融庁の公表資料をもとにIR支援室作成。統合報告書の時期は一例です。

文案を固める順番は、公表の順番と分けて考えます。次の順で進めると、同じ話題の説明を一度で決められます。

  1. 1〜3月に有報の記述情報を前期版から更新する

    経営方針、事業等のリスク、サステナビリティ、人材戦略は期末の数値を待たずに書けます。中期経営計画の見直しや取締役会での議論を、この時期に前期の有報の文案へ反映します。

  2. 決算短信の概況とMD&Aを同じ増減分析から書く

    セグメントごとの増減の要因を1つの資料にまとめ、決算短信の経営成績等の概況と有報のMD&Aはその資料から書きます。今後の見通しの前提条件も、有報の経営方針の記述と照らします。

  3. 有報を総会前に提出し、記述情報の文言を確定させる

    提出した有報の文言が、その年の経営方針とリスクの正式な説明になります。総会前開示の日程に合わせ、監査人とのやり取りが必要な経理の状況から逆算して作業を割り振ります。

  4. 統合報告書を有報の確定した文言から作る

    統合報告書には、有報の項目名と数値をそのまま使い、図や事例、経営者の説明を加えます。有報の後に新しい数値を載せる場合は、次の決算短信や説明資料でも同じ定義で示せるかを確かめます。

FOR INVESTORS

総会前に有報が提出されると、投資家は議決権を行使する前に有報の経営方針やガバナンスの記載を読めます。招集通知と有報の説明が食い違っていないかも、この段階で比べられます。

DISCLOSURE

統合報告書は任意の書類ですが、有報から統合報告書を参照する場合でも、必要な事項は有報に書いておきます。統合報告書の数値を有報より先に作ると、有報の監査の過程で数値が変わった場合に直す範囲が広がります。

—まとめ

決算短信は業績と配当を速報する取引所の書類、有報は経営方針からガバナンスまでを記載する法定の書類で、統合報告書は有報の記述を詳しく説明する任意の書類です。経営方針、事業等のリスク、サステナビリティ、ガバナンスの説明は、法定の書類としては有報にしか記載欄がありません。2026年3月期には3月期決算会社の88.3%が有報を総会前に提出しており、公表の順番どおりに作ると記述情報を書く期間が5月から6月に集中します。経営方針やリスクの文案を期末前に有報の形で固め、決算短信とMD&Aを同じ増減分析から書き、統合報告書は有報の確定した文言から作るという順番にすると、3つの書類の説明がそろい、決算発表後の作業も分散できます。

石塚康一

執筆

石塚 康一公認会計士/株式会社プライムコンサルティング 代表取締役

監査法人のIPO部門と、証券会社の投資銀行部門(主幹事証券会社の公開引受部)を経て、株式会社プライムコンサルティング代表取締役。数十社の上場準備に携わり、開示書類の作成と会計論点の検討を受け持ってきました。IR支援室では、決算説明資料・ロードショーマテリアルの作成と、会計面の確認を担当しています。

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出典

  1. 株式会社東京証券取引所「決算短信・四半期決算短信作成要領等(2026年7月版)」 https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/format/summary/tvdivq0000004wuh-att/t13vrt0000010n9j.pdf
  2. 株式会社東京証券取引所「決算短信(サマリー情報)記載上の注意事項」(決算短信(添付資料)の開示事項を含む) https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/format/summary/tvdivq0000004wuh-att/mklp770000003457.pdf
  3. 金融庁「「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等の公布及びパブリックコメントの結果について」2026年2月20日 https://www.fsa.go.jp/news/r7/shouken/20260220/20260220.html
  4. 金融庁「「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等の公表について」2025年11月26日 https://www.fsa.go.jp/news/r7/shouken/20251126/20251126.html
  5. 金融庁企画市場局企業開示課「企業内容等の開示に関する内閣府令等の改正」『商事法務』No.2420(2026年4月15日号、金融庁ウェブサイト掲載) https://www.fsa.go.jp/frtc/kikou/2026/20260415_shojihoumu.pdf
  6. 金融庁「「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」に対するパブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」2019年1月31日(経営方針、事業等のリスク、MD&Aの記載上の注意) https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20190131/01.pdf
  7. 金融庁「株主総会前の適切な情報提供について」2025年3月28日 https://www.fsa.go.jp/news/r6/sonota/20250328-2/20250328-2.html
  8. 金融庁「有価証券報告書の定時株主総会前の開示について」(2026年11月2日更新)、同「2026年3月期に係る総会前開示の状況」 https://www.fsa.go.jp/policy/kaiji/sokaimaekaiji.html、https://www.fsa.go.jp/policy/kaiji/sokaimaekaiji_202603.pdf
  9. 金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ(第5回)「事務局説明資料」2026年5月18日 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/disclosure_wg/shiryou/20260518/01.pdf
  10. 経済産業省「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス2.0(価値協創ガイダンス2.0)」2022年8月30日改訂 https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/Guidance2.0.pdf
  11. 経済産業省「伊藤レポート3.0・価値協創ガイダンス2.0の概要」2022年8月 https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220831004/20220831004-d.pdf

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